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中国と距離を置いた政権は長続きする…平安時代から如実になった日中離反の歴史学



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◆中国から離れると日本はうまくいく― 日中離反の歴史学(1):石平(拓殖大学客員教授)

■中国経済転落の道連れにされた韓国の二の舞になるな

◇「反日」一色の恐ろしい年に

去る2014年の年末、日本国内と中国国内の両方において、 今後の日中関係の行方を予兆するような注目の出来事があった。

まず日本においては、いままで中国と是々非々で対峙してきた安倍首相の率いる 自民党が総選挙において大勝を収め、安倍政権はよりいっそう盤石となり、 長期政権への地歩を固めた。
国民からの多大な信任を得て再出発した安倍首相は、 おそらく今後も一貫して日本の主権と領土を守り抜こうとする姿勢を堅持し、 いわゆる歴史認識問題において自らの信念を貫こうとするのであろう。

その一方、中国の習近平政権は2015年における不動産バブルの崩壊と経済のさらなる沈没を見据えて、今後広がるだろうと予想される国内の動揺と混乱の拡大への対策として、「反日」という必殺の剣を抜いたようである。
去年12月13日、習近平国家主席は自ら南京へ赴き、中国の国家元首として初めて、いわば「南京大虐殺記念日」の国家的記念行事に参加して熱のこもった反日大演説を行なった。 習主席は演説のなかでは一応「日中友好」にも言及してみせたのだが、それは本心からの思いであるとはとてもいえない。
国家規模の記念式典の開催をもって根拠の乏しい「大虐殺」を国民に 再認識させようとするこの行動自体、まさに「日中友好」を台無しにしてしまうものである。

もちろん12月の式典はたんなる序の口、終戦70周年にあたる今年においてこそ、 中国は7月7日の「盧溝橋事件記念日」、8月15日の日本敗戦の日、 そして9月3日という中国が決めた「抗日戦争勝利の日」などの記念日を最大限に利用して、 全国規模の反日キャンペーンを徹底的に盛り上げていく予定である。

それらの記念日に合わせたキャンペーンの展開以外にも、中国政府はこの1年を通して、 学界や芸能界や教育界などを総動員して、反日の学術討論会やシンポジウムを やたらに開催させたり、日本への憎しみを煽り立てるようなドラマや映画を大量乱造させたり、 子供たちに「日本軍の残虐さ」に関する特別講義を受けさせたりして、 昔の江沢民政権顔負けの国民的反日運動を展開していくのであろう。

2015年の中国は、まさに「反日」一色に染められていく恐ろしい年となろう。

その結果、2015年の日中関係は、相変わらずの領土問題での対立に加えて、いわゆる歴史問題をめぐる両国間の国民感情の対立と離反はさらに増幅され、 「関係改善」とは程遠い冷えきった関係が継続されるのではないかと予測される。
そういう意味で今年は、厄介な隣国である中国にいったいどう対処すべきなのか、という日本にとっての大問題が再び提起される1年となろうが、 じつはこの問題に関しては、去年の11月に第23回山本七平賞を受賞した拙著の『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で、 自分なりの一つの明快な答えを出しているのではないかと思う。



◇平安時代が「平穏」だった理由

日本は中国にどう対処すべきなのか。 それは、2000年以上の日中関係史を見ればすぐにわかることなのである。
世界のどこの国の歴史にも、いわば「治世」と「乱世」との周期的交代がある。 日本の場合、たとえば内乱の戦国時代が終われば安定した江戸時代となり、 黒船の来航によって「徳川300年」の夢が破れると、 日本列島は一気に「幕末維新」の動乱期に突入するという具合である。


この「治」と「乱」の交代サイクルに何らかの法則性がないのか。 それこそが歴史学の永遠なる研究課題の一つであるが、 日本の歴史に限って「治」と「乱」の交代サイクルに注目すると、 一つ、じつに不思議な傾向が浮かび上がってくるのである。

それはすなわち、日本国内の「治」と「乱」の交代は、 日本と中国大陸との関わり方に深い関係をもっているかのように見える、ということである。 つまり、日本が中国大陸に深入りしたとき、あるいは中国の王朝に接近して深いつながりをもったとき、日本国内は往々にして動乱の時代に突入してしまう。

逆に、中国大陸から遠ざかって緊密な関係をもたないとき、あるいは中国の王朝との交渉を中断した時期、日本の国内はむしろ安定していて長期的な繁栄を享受できた、ということである。

日本の政治権力との関係からいえば、日本の歴史上、中国と濃密な関係をもち 中国に深入りした政権は往々にして短命に終わっているのに対し、 中国と一定の距離を保った政権は逆に長持ちする、という不思議な現象にもなる。

この傾向が強く表れてきたのはやはり、日本がすでに中華秩序からの脱出を果たした平安時代からである。 この時代、日本は政治体制の面においては中国から導入した律令制を骨抜きにして、 日本独特の封建制へと移行しつつある。
平安時代初期の百年間こそ、日本はそれまでの習慣に従って中国への遣唐使派遣を断続的に行なっていたが、894年に遣唐使派遣が正式に廃止されると、以後200年間、 日本は中国大陸とはほとんど没交渉の時代となった。

ある意味では、平安時代というのは、日本がそれまでの歴史のなかで中国大陸から もっとも遠ざかった時代なのである。

そしてこの平安時代こそ、日本の歴史のなかでもっとも長い「平穏の時代」が続いた幸せの歳月であった。 300年近くにわたるこの時代において、「平将門の乱」などの局部的な地方反乱が たまに起きた以外には、国内は至って平穏にしてまさに「天下泰平の世」であった。 中国大陸と没交渉になってから、『古今和歌集』や『源氏物語』の誕生に象徴されるような 国風文化の開花が見られて、絢爛優雅な王朝文化が生まれたのである。いまの日本人にとっても、平安時代はまさに憧れの素晴らしい時代であろう。


平安時代の「平安」を破ったのは「保元・平治の乱」だったが、 内乱の平定に活躍した平清盛は、平安朝を乗っ取ったかたちで自前の武家政権をつくった。 だが、天下を取ったあとに清盛は気を大きくしたせいか、とてつもない大事業に着手した。 彼は音戸の瀬戸や大輪田泊などの港を整備して中国・南宋との日宋貿易を盛んにした。 清盛の手によって、遣唐使の停止以来中断していた中国への通航ルートが再開され、 日本は中国に再び近づいた。

しかしこの平家政権はやはり、一代の繁栄で滅びることとなった。 中国との貿易などとは無関係な東国の「田舎武士」たちが立ち上がると、 「国際派」の平家政権はたちまちにして崩壊してしまった。



◇中国に平身低頭した武家政権の末路

平家政権のあとの鎌倉幕府は、最初から中国大陸と関係の薄い政権であった。 幕府の執権たちはたびたび中国から禅僧を招いて禅寺を開いた以外に、 中国の王朝とはほとんど接点がなかった。 そして、平家とは同じ武家政権でありながら、鎌倉幕府は短命に終わらずにして、 140年以上の長期政権を維持することができた。


だが、たいへん不運なことに、鎌倉幕府が自ら進んで大陸との交渉を求めなかったにもかかわらず、今度は向こうから無理やりに押し寄せてきた。 中国大陸を征服したフビライの元寇であった。 そのとき、武士たちが一丸となって団結してそれを撃退したのは日本の歴史の幸いである。 もし日本がモンゴル軍によって占領されて、いわば「蒙古版中華秩序」のなかに 組み込まれていったら、日本はどれほど惨めな国となっただろうか。

しかし日本側の勝利には大きなコストも伴った。 幕府が無理をして祖国防衛の大戦争を遂行したことは結局、 御家人たちの不満を招き幕府体制の弱体化をもたらして、やがて鎌倉幕府の崩壊につながったことは歴史学上の定説ともなっている。 考えてみれば、鎌倉幕府の崩壊を招いたのはやはり、 大陸のほうからやって来た「祟り神」なのである。


鎌倉幕府に取って代わって日本を支配した室町幕府は、 史上2番目の正式な武家政権である。 だが、最初の鎌倉幕府と3番目の江戸幕府を比べれば、 室町時代における天下泰平の時期はもっとも短く、むしろ動乱の時期が長かった。
足利尊氏が将軍職に就いてからも約60年にわたって「南北朝争乱」の時代が続いた。 三代将軍義満の手によって南北合一が実現されて、やっと平和の時代が訪れたと思いきや、 わずか六十数年後には「応仁の乱」が起き、日本全国が大乱世の「戦国時代」へと突入していく。 考えてみれば、室町幕府の治世というのは結局、史上最大の戦乱期である戦国時代の「準備期間」にすぎなかったのである。


この室町幕府の統治体制を完成させた足利義満は、 中国との「勘合貿易」を確立したことで有名である。 勘合貿易は、中国の王朝(当時は明王朝)に貢物を差し出す「朝貢貿易」の形をとっているから、そのために義満は自ら進んで明王朝の冊封体制に入り、 明の皇帝の臣下としての「日本国王」の立場に甘んじた。 それはまさに、日本と中国との関係が推古朝の聖徳太子以前に逆戻りしたような時代への逆行である。

考えてみれば、武士としての誇りも日本の政治リーダーとしての主権意識も捨てて、 金儲けのために中国に平身低頭して接近したこの武家政権がそう長く続かなかったのは、むしろ当然のことである。



■プロフィール
石平(せき・へい)拓殖大学客員教授
1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。
1988年来日、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。
民間研究機関を経て、評論活動に入る。
著書『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)が第23回山本七平賞を受賞。


月刊誌『Voice』 2015年01月31日
http://blogos.com/article/104491/





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