AIIB事件がなかったら、米中南沙対立もなかったの???


RPE Journal==============================================



       ロシア政治経済ジャーナル No.1291


                             2015/11/5


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「AIIB事件」後、中国に対し強硬になったアメリカ。

では、「AIIB事件」がなかったら、どうだったのでしょうか?


★AIIB事件がなかったら、米中南沙対立もなかったの???


全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


CGSの新動画が出ました。

今回は、「反日統一共同戦線」の存在を知らない安倍政権の動きに
ついて。

2012年9月から現在まで、日本と米中はどう動いてきたのか?

表面にあらわれてくる現象の背後に何があったのかを解説していま
す。

是非ごらんください。

https://www.youtube.com/watch?v=U_3rpBf54ZI



では、本題。

読者のSさまから、こんな質問をいただきました。



<もし件のAIIB事件が起こらなかったら、南シナ海の行方とい
うか。。。


中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってし
まったのでしょうか?

AIIB事件が起らなかった時、米国はどうするつもりだったので
しょうか?>


(●Sさまからのメール、全文は【おたよりコーナー】で!)


皆さんご存知のように、今年3月に「AIIB事件」が起こった時、


「アメリカは、必ず中国に逆襲する」


と書きました。

メルマガでは長すぎるので、ダイヤモンドオンラインさんに、


「どうやって逆襲するのか?」


その方法も書きました。

http://diamond.jp/articles/-/70786

で、半年経って、まさに書いたとおりになっている。

そこでSさまは、疑問に思われた。


「でも、AIIB事件がなかったら、どうなっていたのだろう???」と。


今回は、これを考えてみましょう。



▼AIIB事件前の状況1 ~ シリア戦争ドタキャン



世界情勢を知る最重要ポイントは二つです。


1、長く見る

つまり、過去までさかのぼって見ること。


2、広く見る

つまり、「世界的視点」で見ること。

たとえば、ウクライナ情勢を見るときも、シリア情勢を見るときも、
必ず大国群の意図と動きを見ること。


というわけで、AIIB事件が起こる前の世界情勢を見てみましょう。


アメリカには、戦略上「重要な地域」が三つあります。

すなわち、

・欧州
・アジア
・中東


で、アメリカが「どの地域を最重要視するか?」は、情勢によって変
わるのです。

2013年、アメリカの目は、明らかに「中東」にむいていました。

具体的には、シリアの反米アサド政権を打倒すること。

2013年8月、オバマは、「アサド軍が化学兵器を使ったので、シリア
を攻撃する!」と宣言しました。

国連報告によると、「化学兵器使っていたのは【反アサド】の方だっ
たのですが、ここでは詳しく触れません。

証拠に興味がある方は、こちらをご一読ください。

http://www.mag2.com/p/news/118892

2013年9月、オバマは「シリア戦争」をドタキャンして、世界
を驚かせました。

プーチンの仲介で、アサドは、「化学兵器破棄」に同意。

そして、アメリカは、アサドのバックにいるイランとの和解にも
動きはじめました。

(2015年7月、核開発問題で歴史的合意に至る。)


こうして、オバマは「シリア攻撃」を断念し、イランとの和解に
動きはじめた。

これは一体なんなのでしょうか?

なぜアメリカにとって「中東」は大事だったのか?

ここに原油と天然ガスが集中しているからです。

ところが、シェール革命で、アメリカは、原油生産でも天然ガス生
産でも世界一になってしまった。

自国の埋蔵量も、十分あることがわかってきた。

(シェール革命前は、「2016年頃アメリカの原油は枯渇する」といわ
れていた。)

それで、中東の重要度が下がってしまったのです。

これが、アメリカのシリア放置、イランとの和解の本質です。



▼AIIB事件前の状況2 ~ ウクライナ問題とイスラム国



さて、シリア戦争ドタキャンの2か月後、今度は欧州ウクライナが
騒がしくなってきました。

親ロシア・ヤヌコビッチ大統領に反対する大規模デモが起こった。


2014年2月、革命が起こり、ヤヌコビッチは失脚します。

これ、「陰謀論」でもなんでもなく、アメリカがオーガナイズしたの
です。

なんといっても、「オバマさん自身」が認めていますから。

(証拠はこちら↓
http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2015_02_03/282671141/
動画はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=GeV9grU6ERM  )


2014年3月、ロシアはクリミアを併合。

これで、アメリカの最重要ポイントは欧州にシフト。

最大の敵はプーチン・ロシアになりました。

しかし、「ロシア憎し」の情熱も長つづきしませんでした。

同年8月、アメリカは「イスラム国」への空爆を開始しています。

以後、アメリカの視線はプーチン・ロシアとイスラム国をいったり来たり
していました。



▼AIIB事件の衝撃



アメリカの「戦略重要地域」は、欧州、中東、アジアである。

しかし、2013~14年の動きを見ると、アメリカは中東と欧州
(ウクライナ)で戦っている。

アジアには視線がむいていないことがわかります。

ところが、2015年3月、すべてを一変させる「AIIB事件」が起
こった。

毎回書いていますが、親米国家群、具体的には

イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラ
リア、韓国

などなどが、中国主導「AIIB」への参加を決めた。

しかも、アメリカが「入らないよう」要求していたにも関わらず
です。


「親米国家群が、アメリカのいうことではなく中国のいうことを
聞く!!!!!!!」


これはつまり、「アメリカではなく中国が覇権国家になりつつ
あること」を示していました。


「AIIB事件」で、アメリカの「主敵」は、「プーチン・ロシア」「イ
スラム国」から、中国にかわったのです。

4月末、安倍総理の「希望の同盟」演説で、「日本は味方」
であることを確信したアメリカ。

5月から、中国の「南シナ海埋め立て問題」をバッシングしは
じめました。


これ因果関係が重要です。

「AIIB事件(原因)があったから、南シナ海埋め立てをバッシ
ングしはじめた(結果)」

決して、「中国が国際法を無視しているから、バッシングを開
始した」のではない。

それが証拠に、中国は、「2013年」から埋め立てを開始してい
ます。

アメリカは、事実上2年間、中国の動きを無視していた。

つまり、「AIIB事件」で衝撃を受けたアメリカが、「南シナ海埋
め立て問題」を

「口実」にして「中国バッシング」を開始した。


こういう「因果関係」です。



▼「AIIB事件」がなかったら?



さて、Sさまからの質問に戻ります。


<もし件のAIIB事件が起こらなかったら、南シナ海の行方とい
うか。。。

中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってし
まったのでしょうか?

AIIB事件が起らなかった時、米国はどうするつもりだったので
しょうか?>



ここまで2013~15年の動きを見てきましたが、「AIIB事件」が起
こるまで、アメリカは「南シナ海」の状況にあまり関心をもってい
ませんでした。

ということは、「AIIB事件」がなければ、2013~14年の状況がし
ばらくつづいていたことでしょう。

つまり、アメリカは、プーチン、イスラム国との戦いをつづけてい
た。

しかし、アメリカが、巨大化する中国の脅威に、永遠に気づかな
いということもあり得ないでしょう。

「AIIB事件」ではない他の事件で、「ええ?!中国ヤバいじゃん!」
と気づいたはずです。


その時、やはり「南シナ海埋め立て」は、問題になっていたはずで
す。

要するに、「はやいか、遅いかの違い」ということですね。


日本にとっては、「AIIB事件で、アメリカがはやめに気づいてくれて
よかった!」ということなのですが。



▼アメリカは、「表面上」何も変えることができないが・・・



もう一度、Sさまの質問を。


<もし件のAIIB事件が起こらなかったら、南シナ海の行方とい
うか。。。

中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になってし
まったのでしょうか?

AIIB事件が起らなかった時、米国はどうするつもりだったので
しょうか?>



この、「中国の人工島建設は完成して、人民解放軍の基地になって
しまったのでしょうか?」ですが。

米海軍が動いたにも関わらず、中国は「人工島建設」をやめないと
思います。

ウォールストリートジャーナル10月28日に、

「南シナ海の米中緊迫、5つのポイント」という記事がありました。

その5番目のポイントは、以下のようになっています。



<5.この作戦で実際に何かが変わるのか

 ほとんど変わらない。

中国が造成した7つの小島が存在しなくなるわけではなく、この海
域で中国がますます民間・軍事的存在感を示すのは避けられな
いようだ。

米国は重要な原則とみえるものを示したが、このささやかな抗議
行為では、中国が南シナ海における基地ネットワークの構築・維
持という目的を最終的にあきらめることはないだろう。>




まさに、その通りでしょう。

そして、アメリカも、「今回の威嚇で『人工島建設』を断念させよう」
とは思っていないはずです。

しかし、私たちは、「米中覇権争奪戦」が「はじまったこと」をはっき
り自覚しておく必要があります。

そして、「核兵器大国」同士の争いにおいて、「軍隊同士の戦闘」
は「戦争のほんの一部」でしかないのです。


2014年の「米ロ対立」を見ればわかります。


・情報戦 = プーチンを悪魔化する

「プーチンはヒトラーの再来だ!」「プーチンは世界の孤児だ!」

など、脳みそに残る言葉を100万回繰り返し、信じさせる。


・経済戦 = 日欧米による経済制裁


そして、実際の戦闘は、「代理戦争」でした。

つまりアメリカの利益を代表するウクライナ軍と、ロシアの利益を代表
するウクライナ東部「親ロシア派」の戦い。


米中の争いも、両国軍が大戦争をするような事態は、最終段階まで起
こらないでしょう。

(孫子もいってますが、「戦わずに勝つ」のが一番いいのです。)


アメリカは、別の手段をメインに中国をつぶしていくはずです。

具体的には、


情報戦=中国を悪魔化する、

経済戦=中国経済を崩壊させる


です。

結局アメリカは、「中国の一党独裁体制を崩壊させ、民主化させること」
を目指すことでしょう。

「AIIB事件」まで、アメリカの支配層は、「中国はアメリカの作った世界
秩序の中にとどまる」と信じていました。

しかし、「AIIB」は、明らかに「アメリカの世界秩序の【外】に新たな国際
金融機関をつくること」ですから、「裏切り」に激怒しているのです。



▼アメリカより日本の「自覚のなさ」が心配



それより私が心配なのは、「米中関係が最悪になっている」中、

日本政府が中国との関係改善に動いていることです。

安倍談話、最後の方にこうあります。



<我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎな
いものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極
的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に
貢献してまいります。>



「その価値を共有する国々と手を携えて」とあります。

これは、アメリカとか欧州、オーストラリア、インドなどのことをいって
いるのでしょう?

今、価値を共有するアメリカは、共産党の一党独裁で、人権も言論の
自由もない中国と戦っています。

そんな中日本は、「価値をまったく共有しない国」と関係を改善してい
る。

なにやってるんでしょうね。

日本政府は、「みんなと仲良くしなきゃね」ということなのでしょう。

しかし、アメリカは、「安倍の『希望の同盟』演説も、『談話』も口だけ。

日本は米中を戦わせて「漁夫の利」を得ようとしている狡猾な国だ!」

と疑うことでしょう。

韓国みたいな「二股外交」はやめて、是非「希望の同盟演説」「談話」
が「ウソでないこと」を証明してほしいと思います。

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