「パリ同時多発テロ」で何が変わる?




RPE Journal==============================================



       ロシア政治経済ジャーナル No.1296



                      2015/11/16


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◎ロシア政治経済ジャーナル
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パリで、フランス史上最大、最悪のテロが起こりました。

これで世界はどう変わるのでしょうか?







★「パリ同時多発テロ」で何が変わる?


全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは。

北野です。




皆さんご存知のように、フランス史上最大、最悪のテロが起こりま
した。

今日は、これについて考えてみましょう。



▼何が起こったのか?



時事通信11月15日に、「何が起こったのか?」がよくわかる記
事がでています。

長いですが、引用してみましょう。



<30分間に7カ所襲撃=3チームで分刻みの犯行─パリ同時テロ

時事通信 11月15日(日)10時49分配信

パリ検察のモラン検事は14日の記者会見で、同時テロの推移を分
刻みで説明した。

実行犯は三つのチームに分かれ、競技場とレストラン、バタクラ
ン劇場をそれぞれ襲撃。

30分余りの間に7カ所を立て続けに襲う用意周到な犯行の様子が
明らかになってきた。

ロイター通信などによると、最初の襲撃は13日午後9時20分。

フランス対ドイツのサッカー親善試合が行われていた競技場のゲ
ート付近で、襲撃犯の1人が着用していた自爆ベストを起爆させ
た。

犯人が死亡したほか、近くにいた1人が巻き込まれ、一連のテロ
の最初の犠牲者となった。

その直後、カラシニコフ自動小銃で武装した複数の襲撃犯が、セ
アトの黒い車でパリ10区に出現。

同25分、レストラン2カ所のテラス席で金曜の夜を楽しむ人々に
向かって乱射し、15人を殺害した。

同30分、最初の襲撃があった競技場で2人目の男が自爆死。

1人目と似た自爆ベストを着用していた。

10区に隣接する11区では同32分と同36分、レストラン2カ所が相
次ぎ銃撃され、計24人が死亡。

いずれの現場でも、黒いセアト車に乗りカラシニコフを持つ襲
撃犯が目撃されており、10区と同じチームによる犯行とみられ
る。

同40分ごろには、男1人が11区にある別のレストランで自爆死。

巻き込まれた1人が負傷した。

同じ頃、襲撃犯3人がバタクラン劇場付近にフォルクスワーゲン
の黒い車で乗り付けた。

3人は劇場内に侵入すると、コンサートに熱狂する若者らに向か
って銃を乱射。

89人を殺害して劇場内に立てこもった。

同53分、競技場付近で3人目の男が自爆。

最初の襲撃からここまで、わずか33分間の凶行だった。>



わずか33分の間に、7か所でテロ。

メチャクチャ組織的であることがわかります。

フランスのオランド大統領は、「イスラム国の犯行だ!」と断定し
ました。

そして、「イスラム国」は、「犯行声明」を出しています。



<ISがビデオ声明「フランス人を眠らせるな」 空爆非難

朝日新聞デジタル 11月15日(日)7時23分配信

過激派組織「イスラム国」(IS)の広報部門のロゴが付けられた
ビデオ声明が14日、ネット上に掲載された。

仏語で「おまえたちは我々を抑圧し、宗教を攻撃し、預言者を侮辱
した。

我々はいま、おまえたちのパスポートを信じない」などと述べた。

複数の男たちがフランスのパスポートを燃やし、アラビア語で「ア
ラー・アクバル(神は偉大なり)」と声をあげた。>



「動機」は何なのでしょうか?

「フランスが、シリアに介入したことだ」とテロリストは
語っていたそうです。



<パリ連続襲撃事件、実行犯は「シリア介入」が動機と語る

AFP=時事 11月14日(土)13時13分配信

【AFP=時事】仏首都パリ(Paris)で13日夜に起きた連続襲撃
事件で、標的にされた場所のうち約100人が死亡したコンサー
トホール「バタクラン(Bataclan)」に立てこもった実行犯の
1人は動機として、シリア内戦へのフランスの軍事介入を口に
していたと目撃者が語っている。

現場に居合わせたラジオ司会者のピエール・ジャナザック
(Pierre Janaszak)氏は「彼らがはっきりと、オランド(仏
大統領)の誤りだ、おまえたちの大統領の誤りだ、シリアに介
入すべきではなかった、と言ったのを聞いた」と話した。>


というわけで、

犯行 = イスラム国

動機 = フランスがシリアに介入したこと

(●フランスは、2014年9月からイスラム国への空爆に参加
している。)



▼パリ同時多発テロ前の状況



以上、13日に起こったことを見ました。

しかし、状況をもっと深く理解するために、テロリストがいっ
ている「シリアで何が起こったのか?」を知る必要があるでし
ょう。


中東、北アフリカ諸国で2010年ごろから「アラブの春」と呼ば
れる革命運動が活発になりました。

実際にいくつかの国で、独裁政権が崩壊しています。

2011年末、独裁者アサドが支配するシリアでも、「革命運動」が
おこってきた。

ロシアは、事実上の同盟国であるシリアのアサド現政権を支持。

一方、欧米は、「反アサド派」の支援を開始しました。

もちろん今回テロがあったフランスも。

この辺は、皆さんご存知ですね。


「イスラム国」は当時、欧米が「民主主義を求める善の勢力」と定
義した「反アサド派」に属していました。

長くなるので、ここでは詳細に触れませんが、

「イスラム国」【驚愕の正体】については、こちらの記事をご一読
ください。

http://www.mag2.com/p/news/118892


欧米対ロシアの「代理戦争」と化したシリア内戦は激化していき
ました。

「なかなかアサド政権は倒れない!」

業を煮やしたオバマは2013年8月、「シリアを攻撃する!」と宣
言します。

しかし、翌9月、「やっぱシリア攻撃やめた!」と戦争をドタキ
ャン。

世界を仰天させます。

プーチンの説得により「化学兵器破棄」に同意したアサド。

誠実に約束を守り、政権を延命させることに成功しました。


アメリカの熱意が衰えてきたことで、「イスラム国」は
「反アサド派」の枠にとどまらない活動を開始します。

2014年1月、「イスラム国」は「独立」を宣言しました。

同6月には、「カリフ宣言」。

そして、彼らは外国人を片っ端から捕まえ、身代金を要求。

「公開処刑」の動画をネット上に公開し、世界を震え上がらせ
ました。


2014年8月、オバマは、「イスラム国」への空爆開始を宣言。

同年9月、今回テロがあったフランスが空爆参加を表明。

「有志連合国」の数は、どんどん増えていきました。


しかし、アメリカを中心とする空爆は、どうも「本気」が感じられ
ません。

1年間空爆をつづけている間、「イスラム国」は弱くなるどころか、
逆に支配領域を広げていった。

ロシアは、欧米の空爆について、

「本気ではない。
イスラム国をアサド政権打倒のための武器として使っている」

と考えています。


長びくシリア内戦。

支配領域を拡大していく、残虐な「イスラム国」。


結果、新たな大問題が起こってきました。

それが、「大量難民」の問題です。

テロが起こる前、欧州のメディアは、毎日「難民問題」がメインで
した。


2015年9月30日、ロシアがシリア空爆を開始。

「共通の敵イスラム国を打倒するため」という建前ですが、本音
は、親ロシア・アサド政権を守るため。

それで、「イスラム国」と「反アサド派」両方を空爆しています。

「イスラム国をアサド打倒のために利用したい」欧米の「なんち
ゃって空爆」と違い、ロシアは本気。

1か月半の空爆で、アサド政権は元気を取り戻しました。

アサド軍は現在、着々と失地を回復しています。

これが、「パリ同時テロ」が起こる前の状況です。



▼「パリ同時多発テロ」で何が変わる?



次に、「パリ同時多発テロ」で何が変わるかを考えてみましょう。


・フランス

まず、テロが起こったフランス。

オランドさんは、「イスラム国」に逆襲せざるを得ないでしょう。

つまり、いままでとは違って、真剣に「イスラム国」を空爆しな
ければならない。

ここでやめたら「イスラム国に屈した」ことになります。


・欧州全般

欧州はどうでしょうか?

欧州は、今回のテロを、「難民受け入れ拒否」の口実として使うで
しょう。

というのは、テロリストの中に、「難民が含まれていた」という報
道があるからです。

朝日新聞デジタル11月15日から。



<検察は会見で、サッカー場で見つかった自爆テロの容疑者1人の
遺体の近くから、シリアの旅券(パスポート)が見つかったと述べ
た。

旅券の人物はシリアで1990年9月に生まれ、現在は25歳にな
る。

だが容疑者が旅券の所有者本人かどうかは不明。

 ギリシャ政府は会見に先立ち、この旅券の所有者が10月3日、
トルコ国境に近いギリシャ東部レロス島で難民として手続きをとっ
た記録があることを明らかにした。

ギリシャは指紋などのデータをフランスに送った。>



実際、「難民の中にイスラム国メンバーが混ざっていること」は大
問題です。

「便衣兵」(=敵を欺くために私服を来た軍人)を大量に入れてい
るようなもの。

というわけで、欧州が今回のテロで、「難民を規制しよう」となる
のは、当然の流れですね。


(難民が欧州に来なくてもいいよう、シリアの安定化が急がれます。)


・ロシア

あまりよくない言い方ですが、事実として、「パリ同時テロ」で楽
になるのがプーチン・ロシアです。

皆さん思い出してください。

「クリミア併合」で、プーチンが「世界の孤児」なったのは、1年8
か月前です。

今、「ウクライナ問題」を思い出す人は、ほとんどいません。

ロシアのシリア空爆は、当初「反アサド派を空爆している!」と非
難されました。

しかし、批判の声はどんどん小さくなっています。

「パリ同時多発テロ」を受けて、プーチンはこんな声明を出しまし
た。

毎日新聞11月15日



< ◇ロシア

 ロシアのプーチン大統領は14日、オランド仏大統領に弔意の電
報を送った。

露大統領府によると、プーチン氏は「野蛮なテロ」と非難し「この
悪との戦いには国際社会の真の協力が必要なのは明らかだ」と訴え
た。

シリア空爆を巡り、ロシアが欧米諸国と対立していることなどを念
頭に置いた発言とみられる。 >



いつの間にか、「クリミア」「ウクライナ」問題は忘れ去られた。

そしてプーチンは、「欧米と共に、共通の敵イスラム国と戦う同志」
になりつつあります。

1年前には、「ヒトラーの再来」と呼ばれた男が、見事ですね。

そして、「ロシアが欧米と和解にむかう」のは、RPEが3月に予想
したとおりです。



・アメリカ

「パリ同時多発テロ」前、アメリカは影響力の低下に悩んでいました。

3月、「AIIB事件」が起こり、イギリス、フランス、ドイツ、イタ
リア、イスラエル、オーストラリア、韓国などが、

アメリカを裏切り、中国側についた。


世界は現在、「米中覇権争奪戦」を軸にまわっています。

しかし、勝敗は、「その他の大国がどっちにつくのか?」できまる。

アメリカにとって特に痛いのは、味方だと思っていた欧州諸国があき
らかに米中間で揺れている。

むしろ「中国側」に傾いている。

今回のテロで、アメリカは、「イスラム国との戦い」を名目に、欧州
への影響力回復につとめるでしょう。


「敵の敵」は味方。

「イスラム国」という「共通の敵」を利用し、


アメリカ、欧州、ロシア


の連帯を構築しようとすることでしょう。

しかし、アメリカは、この連帯を、最大の脅威である中国に対抗す
るために使うかもしれません。


2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起こりました。

そして、世界は大きく変わりました。


2015年11月13日、「パリ同時多発テロ」が起こった。

今回も、世界は大きく変わるはずです











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