国際派日本人のための英語学習法とは

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Common Sence: 国際派日本人のための英語学習法とは
~ 読者の体験から

 英語教育に関するお便りを通じて、国際派日本人のための英語学習法を再考する。
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 前号「国際派日本人にお勧めの勉強法」[a]には多くのお便りをいただいた。米国駐在十数年の元銀行マン、プロの通訳・翻訳者、英語教育専門家など、この分野で一家言ある人々から、ご意見をいただいた。それらの中には、前号で語り尽くせなかった論点もあるので、これらの方々からのお便りを紹介しつつ、一緒に考えてみたい。


■1.「自国語が使えるあなたがた日本人が羨ましい」(「北米駐在十数年の元銀行マン」さん)

 完全に同感です。私が海外に駐在して知ったこと

1.東南アジアなど旧植民地国の人が英語が上手なわけ

 彼らは真顔で言いました。「植民地にならず自国語が使えるあなたがた日本人が羨ましい。自分たちは英語を話さなければ生きていけないのです。」

2.日本を知らなければ相手にされない。

 ビジネスの場面でも、社交でも、学校でも、こちらが日本人だと知ると必ず訊かれることは「日本ではどうなの?」。本や雑誌を取り寄せて日本の政治経済、伝統文化、歴史などを慌てて勉強する駐在員や子女の多かったこと・・・

3.あなたのご意見は?

「わが社の調査部によれば・・・」とか「大方の見方は・・・」と前置きして話し始めると途中で遮られ「あなた自身の意見が聞きたい」と言われ冷や汗をかきました。

結論:英会話力が問われる場面は殆んどありませんでした。

■伊勢雅臣:

「自分たちは英語を話さなければ生きていけないのです」というのは悲痛な言葉ですね。改めて、英語を話せなくとも十二分に生きて行ける日本の有り難さを感じます。

「日本を知らなければ相手にされない」とは、多くの在留邦人が感じていることだと思います。弊誌の読者に海外在住の方が多いのも、これが原因でしょう。いくら英語ができても、日本の事を知らなければ、単なる二流の英米人に過ぎません。海外の人々が出会いたいのは「一流の日本人」なのです。

「英会話力が問われる場面は殆んどありませんでした」とは、学校や受験勉強などで、英文法をある程度やられていたからだと推察します。文法力があれば、会話力は現地ですぐに伸びます。逆に文法を知らずに耳から覚えるだけでは論理的なコミュニケーションはできません。


■2.「フィリピンの本屋では英語の本しかなかった」(久夫さん)

 前にフィリピンの本屋に行った時、英語の本しかなくて、タガログ語の本がほとんどなかったことを思い出しました。母国語で大学レベル以上の知識が学べることは本当に恵まれているし、幸せなことだなと感じます。

 外国語は、英語英語にこだわらず、自分の趣味というか性格に合った言葉をひとつ身につければいいぐらいの感じが一番いいのかな?と思います。国際人になるには英語ができないと、という馬鹿な考えはやめたほうがいいです。

 それよりも、自分の性格や相性に合う外国語を一つ身につけるだけで国際感覚は十分に養えるのではないかと思います。要は得意言語をひとつ探せばいいということです。

 自分にとっては英語よりも中国語の方が性にあっていたし、勉強するのも苦ではありませんでした。

■伊勢雅臣:

 旧植民地では、知識階級は旧宗主国の言語で勉強、読書、仕事をします。フィリピンで英語を解しない人は知的階級ではないので、本など読まず、従ってタガログ語の本など置いてないのですね。国民が英語を話す知的階級と、タガログ語しか話せせない一般大衆に、階級分離してしまいます。国民の同胞感という点では、これは大きなハンディです。

 我が国では、国民の分厚い中間層そのものが知的階級であり、日本語だけで知的教養を得られる、という幸福な状況にあります。

 なお、国際社会はいろいろな民族、文化、宗教が百花繚乱の状態で、「英語だけが外国語ではない」というのは、大切な国際常識です。タガログ語を勉強する日本人がいれば、フィリピンの一般大衆の文化や心情を共感を持って理解できるでしょう。そういう多元的な国際理解をできることは、国際社会を生きていく上で財産となります。

 我が国は、植民地にならずに済んだお陰で、明治時代からフランス語やドイツ語も含め、いろいろな国々に主体的に学んできました。日本人は日本語だけで大学まで勉強できますが、その分、世界のいろいろな言語を自由に学んで、世界中の国民と親しくおつきあいができる、そんな国になると良いですね。


■3.日本の自動車工場の素晴らしい人柄の職長さんたち(直美さん)

 英語を教える仕事、通訳者、翻訳者として仕事をしてきた私としては、仕事をするためにそれなりの努力、勉強を重ね実績を積んできましたが、海外で仕事をするのに必要なのは英語ではなく、仕事ができることだというのはその通りだと思います。

 しかし仕事が、たとえば英語圏でできるということは、すなわち英語で十分にコミュニュケーションが取れるということです。そのコミュニケーションをとれるに十分な知識、経験、実績があるからこそです。英語はコミュニケーションをするためのツールとして役立つ力があればよいということです。

 文中に、
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「一番すごい人は、中卒ながら日本の現場で職長をやっていた人で、アメリカの工場でも、専門用語を並べるだけで、作業者をアゴで使っていた。それでも、一人一人を一生懸命育てようとしていて、その姿勢はアメリカ人にもすぐ伝わるので、皆、彼の言うことをよく聴いていた。
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と書いてありました。私は実際に日本の自動車メーカー数社の製造現場で研修通訳を何度か経験しましたが、現場の職長、フォアマンをしている方たちはまさにこのとおりでした。そして素晴らしい人柄の持ち主で、多くのことを学びました。英語だけではない人間性が仕事を支えていると思いました。またそれが大切だと思いました。

英語はそのためのツールとして働けば十分だということです。逆に言えばツールとして役立つ英語は必要だということです。


■伊勢雅臣:

 アメリカでは、日系自動車メーカーのシェアが40%近くに達しています。一般消費者は日本車に対して外国車という特別な意識もなく、日本車を乗り回しています。

 日本車がそれだけアメリカの消費者にも信用されているのは、直美さんが「素晴らしい人柄の持ち主」と言う職長さんたちが支える製造現場での品質が大きな要因となっています。現在ではその職長さんたちの多くはアメリカの工場で、アメリカ人監督者、作業者相手に熱心に教えた経験があるでしょう。

 そういう人たちは、たどたどしい英語でも、人柄と実力でアメリカ人を指導し、彼らの尊敬を集めていることと思います。これも国際派日本人のお手本の一つです。そのために「ツールとして役立つ英語」は、中学レベルで十分だと思います。この点は後述します。


■4.「外国語を学ぶことは日本語の理解に」(正雄さん)

 毎週、日曜日のJOGを拝見している元公立小学校長です。きょうの「『英語ができなければダメ』という強迫観念から、まず抜けだそう」の内容を読み、私なりの実践からやや反論します。

 日本は島国ですから、日本語だけでも生活には支障はありません。しかし、日本語だけでなく英語や外国語を学ぶことは日本語をよく理解するためにはかなり効果があります。

 私自身がそうでした。中学校から英語が好きになり、高校でも英語を必死に学び、大学は教育系の英文科に進み、英語教師になり公立中学校で20年余り、英語を教えました。管理職になってから教職員から上がってくる多くの文書を読みますが、ちょっとおかしい文章は英語に訳してみると間違いがよく分かります。

 英語を学んでおいてよかったと思いました。今でもそうです。多くの本を読みますが、すばらしい文章はその背景に外国語を学んだという事実が必ずあります。文学者や詩人の多くは英文科出身者が多いです。

■伊勢雅臣:

「外国語を学ぶことは日本語をよく理解するためにはかなり効果があります」とは、まことに同感です。前号本文で「英文法と知的に格闘することで、国語の力も磨かれる」と書きましたが、外国語の文法を学ぶことで、国語との違いが理解でき、それを通じて日本語の力が鍛えられます。

 また「すばらしい文章はその背景に外国語を学んだという事実が必ずあります」と言われる通りで、国語や日本史で多くの著書をものされている渡部昇一氏[b]は英文法の大家、『祖国とは国語』の著者・藤原正彦氏[c]は数学者でアメリカ留学経験者です。

 逆に、日本の伝統文化への理解もなく、いたずらに自国を貶め、他国を持ち上げる人々(特に左翼系)は「マルドメ」(まるでドメスチック、国内派)の人がほとんどではないでしょうか。海外で外国語、外国文化に揉まれてこそ、日本の文化伝統の奥行きが判るということでしょう。


■5.「英語を吸い取り紙のように覚えていきます」(正雄さん)
 退職後、小学校3年生から中学生までに英語を自宅で教えています。3年生くらいになりますと、英語を吸い取り紙のように覚えていきます。

 1年たちますと、中学校1年生の英文を声に出して正しい発音で読むことができます。日本語にはまったく影響はありません。アルファベットもきれいに書くことができます。帰国子女の子もいますが、日本の英語の教科書はよくできていると言います。

 中学校3年間の英語だけをきちんとマスターすれば、海外でも十分通用する英語を使うことができます。私もアメリカに3週間派遣されて行きましたが、使った英語は中学校レベルでした。もちろんアメリカ人と討論したり、日本の文化・歴史について英語で説明したりもしました。

■伊勢雅臣:

「中学校3年間の英語だけをきちんとマスターすれば、海外でも十分通用する」とは、その通りだと思います。前号で「中学、高校では文法中心の英語をしっかり勉強する」ことをお勧めしたのは、この意味です。

 しかし、だからこそ、英語は中学に入ってからやればよいので、小学校から始める必要はないと考えます。1年間海外留学をした学生の英語語彙力は、日本語の語彙力と非常に高い相関を持つという調査結果があります。国語ができる生徒は英語もできるのです[d]。

 国語は論理的思考力の基礎であり、また国語の名文名句を暗唱することは、日本人としての情緒・感性を育てます。まさに「祖国とは国語」です[d]。小学生の頃に「吸い取り紙のように」覚えるべきは、国語による論理的思考力と、日本人としての情緒でしょう。そういう基礎があってこそ、中学校以上での英文法との知的格闘が意味を持ちます。


■6.「ゲームや歌ばかりの授業では」(正雄さん)

 しかし、残念ながら今の学校教育の英語についていけない子どもや生徒の多いこと。落ちこぼれても誰も面倒みてくれないので、親御さんたちは学習塾に走ります。

 小学校の外国語活動が始まって数年たちますが、いまだにゲームや歌ばかりの授業を行っています。高学年はもうそのような授業に飽いてきています。系統的に小学校でも英語そのものを教える必要があります。今の日本の英語教育は、小学校と中学校との連携がうまくいっていないことが問題です。

 高校や大学とも連携をとり、筋の通った英語教育を実施すべきです。そうしていないので何年、英語を学んでも簡単な英語が分からないのです。「英語ができなければダメ」とは言いませんが、現実には「英語はできたほうがいい」という結論になります。

■伊勢雅臣:

「今の学校教育の英語についていけない子どもや生徒の多いこと」というのは、ゆとり教育の弊害で、基礎学力が不足しているからだと思います。小学校での読み書き算数をきちんと教える事ができていない現状で、さらにその時間を英語教育に割くというのは本末転倒でしょう。[e]

 ましてや、論理的思考力も日本人としての情緒も未熟なままで、小学生に英語のゲームや歌を学ばせても、国語という祖国のない無国籍人では、将来、外国で一目置かれる日本人にはなり得ません。

 まず一流の日本人であってこそ、海外でも通用する国際派日本人になれる。そのために小学校までは「一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数」(藤原正彦氏)で、中学以降に文法中心の英語をしっかり学ぶ、あとは外国に行って必要性が明確になってから泥縄でも良い、というのが、本講座のお勧めする基本的な考え方です。
(文責:伊勢雅臣)

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■リンク■

a. 934 国際派日本人にお勧めの英語勉強法
「英語ができなければダメ」という強迫観念から、まず抜けだそう。
http://blog.jog-net.jp/201601/article_3.html

b. JOG(702)日本語が育てる情緒と思考
 情緒を養う大和言葉の上に、論理的思考を支える外来語を移入して、我が国は独自の文明を発展させてきた。
http://blog.jog-net.jp/201106/article_2.html

c. 430 「品格ある国家」への道
 日本人が古来からの情緒を取り戻すのは、人類への責務である。http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h18/jog430.html

d. JOG(199) 小学生に英語!?
 小学生の時から英語に慣れ親しめば、本当に英語ができるようになるのだろうか?
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h13/jog199.html

e. JOG(318) 国語の地下水脈
 日本人の感性を磨いてきた名文を暗誦すれば、生きる力が湧いてくる。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h15/jog318.html




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