プーチン、神速の用兵術~ロシア軍、シリアから撤退へ

【RPE】★プーチン、神速の用兵術~ロシア軍、シリアから撤退へ

RPE Journal==============================================



       ロシア政治経済ジャーナル No.1356



               2016/3/17


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プーチンは、軍に「シリアからの撤退」を指示しました。

わずか半年でシリア内戦停戦を実現し、撤退です。

全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


プーチンは、軍に「シリアから撤退するよう」指示を出しました。



<ロシア大統領、軍にシリアからの撤退を命令

CNN.co.jp 3月15日(火)9時36分配信

(CNN) ロシアのプーチン大統領は14日、ロシア軍はシリア
での目的を果たしたとして、撤退するよう指示したことを明らかに
した。

国営スプートニク通信によると、撤退は15日から始まる見通しだ。

プーチン氏は「国防省と軍全体に課された任務の目標は達成された。
シリアからの軍撤退を明日始めるよう、国防相に命じる」と述べた。>



そして実際、空軍の戦力が続々と引き上げを開始しています。

ところでプーチンは、

「国防省と軍全体に課された任務の目標は達成された」

と語りましたが、

軍事行動の「目標」はなんだったのでしょうか?

皆さんご存知ですね。

表向きは、「全人類の敵『イスラム国』(IS)を退治すること」。

本音は、「海軍基地のある親ロシア国家シリアの、親ロシア・反
欧米政権アサドを守ること」です。




<ロシア大統領府によると、プーチン氏は撤退について、シリアの
アサド大統領と電話で会談した。

両首脳は、ロシア空軍がシリアのテロ組織に「相当な」打撃を与え
て形勢を逆転させたとの見方で一致し、空軍主要部隊の撤退日程で
合意した。>

(同上)


アサドは、本当にロシア軍のおかげで救われたのでしょうか?


<軍事アナリストらによると、アサド政権は当時危機に陥っていた
が、ロシアの介入によって反体制派や過激派組織「イラク・シリア
・イスラム国(ISIS)」への反撃が可能となった。>

(同上)


プーチン嫌いのアメリカCNNも、「ロシア軍によってアサド政権は
救われた」ことを認めています。

とはいえ、ロシア軍が「完全に撤退」というわけでもないようで
す。


<ただ、ロシアは「停戦監視のため、シリアに航空援護拠点を維持す
る」という。>(同上)



これは、ISや、シリア北部にしばしば侵入しているトルコなどににら
みをきかすためなのでしょう。



▼ロシア軍参戦と撤退までの流れ


ここまでの流れを、簡単に振り返っておきましょう。


2011年、「アラブの春」の影響がシリアまでおよび内戦が起こ
ります。

ロシアは、シーア派イランと共に、親ロシア・反欧米アサド政
権を支援しました。

一方、欧米および、サウジ、トルコなどスンニ派諸国は、反ア
サド派を支援しました。


「米ロ代理戦争」と化した、内戦はなかなか決着がつかなかった。

しびれを切らしたオバマは2013年8月、

「アサド軍は化学兵器を使いレッドラインを越えた!」

とし、「シリア攻撃開始」を宣言します。


しかし、翌2013年9月には、戦争を「ドタキャン」し、世界を
仰天させました。

表向きの理由は、「プーチンの提案で、アサドが化学兵器破
棄に合意したから」でした。

(実際、化学兵器は破棄された。)

オバマはさらに、アサドを支援するイランとの和解に動きます。

アメリカから「梯子を外された」「反アサド派」の中から、新
たな動きが起こってきました。

それがIS。

ISは、またたく間にシリアとイラクにまたがる広大な領域を占
拠。

油田を占領することで潤沢な資金を得て、世界的脅威に成長し
ていきました。

ISはあまりに残酷。

というわけで、アメリカは2014年8月、かつて自分が支援して
いた反アサド派の元一派ISへの空爆を開始します。

しかし、ISは一方で、反米アサド政権と戦ってもいる。

だから、「都合のいい存在」でもあり、空爆は「ダラダラ」。

成果がまったくでなかったのです。

ISは、アサド政権を追い詰めていきます。


2015年9月、プーチン・ロシアは、「人類の敵ISを打倒する!」

と宣言し、シリアでの空爆を開始しました。

ロシア軍は、米軍が決して手をつけなかった「IS石油インフラ」
への猛烈な空爆を繰り返すことで、

ISの資金源を断ちます。

金を失ったISは、急速に衰えていきました。

さらにロシア軍は、「反アサド派」を攻撃することで、同盟者
アサドを守ることに成功します。


敵ISおよび反アサド派が十分弱体化した。

そして、アサド政権、軍は十分強くなった。

この時期を見計らい、ロシアはアメリカと「シリア停戦協議」に入
りました。

結果、



<シリア内戦>焦点は「停戦の履行できるか」 米露共同声明

毎日新聞 2月23日(火)22時1分配信

【ワシントン和田浩明、モスクワ杉尾直哉】約5年間に及ぶシリア
内戦を巡り、米国とロシアが22日、シリア時間27日午前0時
(日本時間同日午前7時)からの停戦を呼びかけたことを受け、今
後の焦点は停戦の履行に移る。

25万人以上の死者を出した戦いに終止符を打てるのか。>



27日からシリアは停戦に入り、現在もつづいています。

こう振り返ると、ロシア軍は、


1、2015年9月末からシリア空爆開始

2、ISの石油インフラを集中攻撃することで、ISの資金源を奪
った

3、反アサド派への攻撃を繰り返し、弱体化させた

4、アサド政権、軍は、盛り返し、反アサド派を圧倒するよう
になった

5、時期を見計らい、アメリカに停戦を提案

6、2016年2月、シリア停戦合意

7、2016年3月、ロシア軍、シリアから撤退を開始


という流れです。

この間、「わずか半年」という超スピード。

同盟者アサドを守り、シリアに(不安定ではあるが)平和をもたら
した。

アフガンやイラクで「ダラダラダラダラ」戦争をつづけたアメリカ
と比べると、「神速」といえるでしょう。



▼ウクライナ和平まで



プーチンの速さは、シリアに限ったことではありません。

2014年2月、ウクライナで革命が起こった。

親ロシア派ヤヌコビッチ政権が倒れ、親欧米新政権が誕生します。


親欧米新政権は、「クリミアからロシア黒海艦隊を追い出し、NATO
軍を入れる」と宣言していた。

戦略上の超重要拠点を失うことを恐れたプーチンは2014年3月、
「クリミア併合」を断行します。

2014年4月、ロシア系住民の多いウクライナ東部ドネツク州、
ルガンスク州などが、「独立宣言」。

ウクライナ新政権はこれを認めず、内戦が勃発しました。


世界中が「プーチンは、ウクライナ東部も併合する。

その後ウクライナも併合し、バルト3国、東欧を全部併合する」

と大騒ぎになりました。


しかし、RPEは、


・民族構成の違い

クリミアは、ロシア系が6割。
ドネツクは、ロシア系4割。


・歴史的経緯の違い

クリミアは、1783~1954年、ロシアに属していた。

しかし、独立を宣言した東部州は、ソ連時代常にウクライナに属し
ていた。


・経済的理由

独立を宣言している東部州を併合すると、ロシアの人口は一気に
700万人増える。

年金受給者も150万人増え、ロシアの財政負担が重くなる。

経済的にメリットがないどころか、デメリットが大きすぎる。


・安全保障上の理由

クリミアには「黒海艦隊」があるが、ウクライナ東部州には
安全保障上の拠点がない。


というわけで、ロシアは、「東部を併合しない」と予測して
いました。

実際そうなっています。

(詳細はこちら↓
http://diamond.jp/articles/-/51671  )


さて、2014年4月にはじまったウクライナ内戦。

ロシアは、「東部親ロシア派」を支援。

欧米は、「親欧米ウクライナ新政権」を支援しました。


しかし、2015年2月、ロシア、ドイツ、フランス、ウクライ
ナで「停戦合意」が成立します。

これも、シリアとほとんど同じパターンで停戦にいたってい
ます。

つまり、ロシアの支援で東部勢力が、ウクライナ軍を圧倒し
ていた。


「このままでは負けてしまう!

そうなれば、俺たちの支配は、たった一年で終わってしまう!」


と、ウクライナ新政権と支援する欧米を恐怖させ、交渉テーブ
ルに引きずり出した。

結果、大騒ぎされたウクライナ内戦は、たった10か月で停戦に
いたったのです。


こう見るとプーチン、ウクライナは10か月で、シリアは半年で
「停戦」にこぎつけています。

そして、目標を達成したら、さっさと引き上げる。



▼3連勝のダークサイドとトランプ



こう見ると、プーチンは2013年から、いくつかの「戦術的勝利」
を重ねています。


2013年9月、オバマを説得し、シリア戦争を回避した。

2014年3月、クリミアを併合した。

2015年2月、ウクライナ内戦停戦を実現した。

2016年2月、シリア内戦停戦を実現した。


こうみると「連戦連勝」に見えます。

しかし、「大戦略レベル」では大きな問題を抱えています。


ロシア経済は現在、「経済制裁」「原油安」「ルーブル安」で
ひどい状況になっている。

「制裁」に関していえば、つまり、欧米、日本との関係がよく
ない。

(アメリカとの関係は、2015年3月以降改善されていますが、
「制裁解除」には至っていません。)


さらに、昨年11月トルコがロシア軍機を撃墜したことで、ロシア
ートルコ関係が最悪になっている。

これは、ロシアにとっても大きな打撃なのです。

(ロシアとトルコは、ガスパイプライン建設プロジェクトを計画
していた。)


ロシア最大の味方は中国ですが、中国経済がボロボロになってき
ている。

つまり「頼りにならない(事実上の)同盟国」になりつつある。

こう見ると、プーチンは「シリアでの勝利」を長く喜んでいら
れない状況なのでしょう。


明るい兆しは、アメリカに見えます。

共和党トップを独走するトランプは、「プーチンとの和解と協
力の必要性」を公言している。

彼が大統領になれば、制裁は解除されるかもしれません。

それで、ロシアメディアも、「トランプ支持」一色になってい
ます。

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○メールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」


発行者 北野 幸伯


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アドレス変更・解除は http://www.mag2.com/m/0000012950.html



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