韓国の労災死亡率は日本の3倍超だった! “殺人企業”のワーストランキングは財閥系企業が続々と…

“最悪の殺人企業”は韓国化学大手ハンファケミカル-。韓国の大手労組など市民団体が4月、「2016年殺人企業」のランキング10社を発表した。殺人企業という、いささか過激なレッテルはさすが“お国柄”といえるが、労働災害による死亡事故減を目指す、いたってマジメな取り組みだ。背景には、経済協力開発機構(OECD)加盟国でも最悪水準の労災死亡率や、それに反して軽微な企業の処分など、韓国の産業界が抱える構造的な課題がありそうだ。

爆発事故で下請け作業員ら6人が死亡

 「重大災害の企業処罰法が必要だ」

 4月28日の労災犠牲者追悼の日に先立ち、27日にソウル市内で開かれた「ワースト殺人企業選定式」で、弁護士のガンムンデ氏はこう訴えた。

 2016ワースト殺人企業ランキングは、労働健康連帯や毎日労働ニュース、大手労組の民主労総、韓国労総などで組織する「労災死亡対策制定共同キャンペーン団」が、昨年1年間に発生した死亡労災事故件数に基づきまとめたものだ。ワースト1となったハンファケミカルは昨年7月、蔚山工場で発生した爆発事故により下請け労働者6人が死亡する事故を引き起こした。


事故により、無資格請負業者に施工を任せたほか、安全点検も形式だけのずさんな作業実態など、300件近い法令違反が判明。蔚山地検は13人を起訴する事件となった。だが、起訴された同工場長は執行猶予で釈放され、法人に対する処罰もわずか罰金1500万ウォン(約142万円)にとどまった。

 ランキング2位には、死亡労災事故で5人が死亡した韓国鉄道公社や、2件の火災事故などで5人が亡くなった大宇造船海洋など4社が同数で並んだ。3位にはKTX工事現場の崩壊事故や、補修工事中の下請け労働者が列車にはねられるなどし4人が亡くなった韓国鉄道施設公団や、半導体大手SKハイニックスなど4社が選ばれ、政府系企業や財閥系企業の問題が浮き彫りになった。

 同キャンペーン団は声明で、ハンファケミカルの事例を挙げ、社会的な影響力の大きい財閥企業の労災事故に対し、あまりに軽い処分だとして「労災死亡は、企業による構造殺人」だとし、企業や政府官僚に組織的責任を問うための「重大災害の企業処罰法」が必要だと訴えた。


韓国財界に「特別賞」、進む危険の外注化

 また、ランキング外で韓国最大の経済団体、全国経済人連合会(全経連)が「特別賞」に選ばれた。2005年から14年までの10年間で、労災死亡者数の上位50社のうち約8割にあたる39社が全経連所属の大手企業であることに加え、派遣雇用の拡大や解雇規制の緩和など、「労働者を死に追い込む緩和を強力に要求した」のが受賞理由だ。

 確かに過去10年間の労災死亡者数ランキングを見ると、首位の現代建設(死者110人)、2位の大宇建設(102人)、LGグループから分離した財閥系企業のGS建設(101人)と財閥系企業が続く。5位には現代重工業(74人)、6位にサムスン物産建設部門(69人)が入ったほか、15位の現代自動車(45人)▽32位のLG電子(25人)▽33位の起亜自動車(23人)▽36位のサムスン電子(21人)-など、日本でも知名度の高い企業が軒並み、名を連ねている。


また同キャンペーン団は、こうした全経連所属の大企業が、労災保険の適用を回避するため、労災の恐れがある危険な現場業務を下請けに外注するケースが増加していると指摘。3年間の労災保険の給付実績をもとに、労災申請が少なければ保険料を減免する特例措置により、全経連所属の33社が2612億ウォン(約250億円)の軽減措置を受けたとして、韓国労働市場に広がる構造的なゆがみの是正を求めた。

労災死亡率、日本の3倍…労働安全“途上国”

 こうした労組や市民団体の主張の背景にあるのが、韓国における死亡労災事故の深刻さだ。同キャンペーン団がまとめた政府統計に基づく韓国の労災死亡者は、01年~14年までの間で3万3902人にのぼる。年間平均で2400人の犠牲者が出ていることになる。こうした労災死亡者には出退勤時の災害による死者や貨物輸送、バスなど特殊雇用労働者は含まれていないという。

 韓国産業安全保健公団(KOSHA)によると、韓国の年間労働者数1万人当たりの死亡者数の割合を示す労災事故死亡率は、12年基準で0.73となった。日本(0.20)や米国(0.35)、ドイツ(0.17)など主要先進国に比べて極めて高い値となっている。日本の3倍、ドイツの4倍近い労災死亡率は、OECD加盟国でもトップレベルだ。


こうした実情に、韓国内でも「労働安全途上国」「途上国型安全事故」など、安全軽視に対する批判の声は根強い。死につながる重大な労働災害を防ぐためには、企業・組織から就業者一人一人に至るまでが、具体的な対策を講じ、取り組みを継続する必要がある。「殺人企業」のランキング公開で、法整備につなげることも重要だが、それ以上に地道な施策の積み重ねが必要ではないだろうか。

2016.5.15

http://www.sankei.com/premium/news/160515/prm1605150011-n1.html



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