単語がわからないから英語ができない

「単語がわからないから英語ができない」

そう思っている人は多いのではないでしょうか。それは確かに事実だと思います。しかし、「単語さえわかればできるはずだ」と思っている場合は、少し問題があります。なぜなら、「単語を知らない」ということは、英語ができない理由の1つでしかないからです。残念ながら、できない理由はまだほかにもたくさんあります。

例に洩れず、高校生も、よく「単語さえ覚えれば何とかなるんだよね?」「まず単語を覚えなければいけない」と言います。これまでに、英語が苦手な生徒が、

「自分は語彙は比較的豊富だが、文法や構文を知らないから英語ができない。」

あるいは

「自分は単語も文法も構文も水準に達していると思うが、これまでの人生の中で読書をほとんどしていないから、まとまった量の文章を理解するポテンシャルが低い。だから英語ができない。」

といった言葉を発するのを、私は一度も聞いたことがありません。英語が苦手な生徒は、例外なく、自分の学力不足をすべて単語力不足のせいにしようとします。そして、「合格英単語800」みたいなタイトルの本を買い込んで、最初のページから漫然と読んで覚えていこうとします。そして3学期になっても同じことをやっていて、200点満点のセンター試験で80点とか90点とかいった、絶望的な点数を取ってきます。

特に大学入試において、「英語ができる」ということは、「まとまった量の英文が読める」ということとほぼ同義です。文章を読むということは、実は非常に高度なスキルであるという認識をみなさんは持っているでしょうか。私はその認識がない人は、一生外国語を身につけることができないのではないかと思います。

英文を読むための必要条件を低次のものから箇条書きにしてみました。
1.26文字のアルファベットを覚える。
2.この26文字を組み合わせによって形成される単語の意味を覚える。
3.単語が意味のある文になるための規則、つまり文法を覚える。
4.「ability という単語の後には to 不定詞が来る」といった、個々の単語が持つ性質、つまり語法を覚える。
5.特定の意味を形成単語の組み合わせ、つまり構文を覚える。
6.書き手が文章で表現したい内容を理解できるくらいの知識的バックグラウンドを持つ。
この6つの要素が一つでも欠けていると、英文を理解できません。例を挙げてみたいと思います。みなさんは、次の各文の意味を理解できるでしょうか。
A.This is all I know
B.What is important is not his lie itself but the fact of his telling a lie to me.
C.The judge ruled his effort out for an offside.
ちなみに答えは、
A.私はこれだけのことしか知らない。
B.重要なのは、彼の嘘そのものではなく、彼が私に嘘をついたという事実である。
C.審判はオフサイドとみなし、彼のプレーを認めなかった。
となります。

A. の意味がわからなかった人は、上記3で引っかかっています。つまり、「allという単語の後に目的格の関係代名詞が省略されている」という文法規則に気付かなかった(あるいは知らなかった)ということです。

B. の意味がわからなかった人は、上記5で引っかかっています。つまり、「not A but B」という単語の組み合わせは、「AではなくBである」という意味を表す構文であるということに気付かなかった(あるいは知らなかった)ということです。

C. は、かなり英語に自信のある人でも、いま一つピンと来なかったのではないでしょうか。これは、サッカーに精通している人ならすぐにわかる表現です。offside というのは、サッカーにおける「オフサイド」という反則のことで、effort というのは、「ボールを持った選手の一連のプレー」という意味合いです。つまり、この文の意味がわからなかった人は、上記6の項目で引っかかったわけです。この文の意味がわかる人は、文を見ただけで、FWの選手がゴール前で肩をすくめて審判に抗議している様子をイメージできるはずです。

英語ができるようになりたいと思っているのにできない人の多くは、上記2の条件をクリアできればできるようになると思っており、3~6の必要条件を認識できていないのだと、私は自信を持って言えます。逆に、3~6の必要条件をすべて認識できている人は、時間はかかっても、地道に努力すればできるようになるのではないかと思います。

高校生を見ていると、偏差値の高い高校に通っている生徒ほど、3年になってから、あるいは浪人してから大きく成績が上昇する傾向にあります。私はその上昇の原動力となるのは 6 の条件だと思います。偏差値の高い生徒は、普段勉強していなくても、自分の好きな本を読んだり、新聞を読んだりしていて、幅広い知識を身につけている傾向が強いのです。2~5の条件は、比較的短期間で解決できますが、6だけは、参考書を1冊読めば解決するという問題ではなく、日頃の生活態度がものを言います。
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