中国がたくらむ中・韓・露・米の「反日統一戦線」に乗せられたら、先の大戦の必敗路線を歩むのみ。

【国際派日本人養成講座】


No.828 「孤立化路線」か「日米同盟路線」か ~ 北野幸伯『プーチン最強講義』を読む 


  中国がたくらむ中・韓・露・米の「反日統一戦線」に乗せられたら、先の大戦の必敗路線を歩むのみ。



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 ■1.日本に亡命したプーチンの国際政治指南

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  プーチンは、だだっ広い畳の稽古場に急遽臨時で設置された壇上に上がり、別れのスピーチを始めた。
 「よお、お集まりのみなさん! 私は失業者のプーチンです!」
  いきなりの自虐ネタに、会場は大爆笑だ。[1,p331]
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  モスクワ在住の国際関係アナリスト北野幸伯氏の最新刊『日本自立のためのプーチン最終講義』[1]の一節である。プーチンがロシア大統領「ベドメージェフ」の陰謀によって、首相の座を追われ、大好きな柔道の本家、日本に亡命して、秘かに政財界の大物に日本の進むべき道を指南する、という設定だ。

  北野氏の著書は、弊誌でも何度もご紹介しているが[a, b, c]、いずれもロシアという斬新な視点からアメリカ、中国、日本の動きを読み、さらにそれを持ち前のテンポの良い、明快な語り口で語ってくれる。まさに国際派日本人が国際政治を学ぶ上では恰好の入門書と言える。

  今回は、プーチンが「矢部首相」ら、日本の政治家に国際政治を指南する、という設定で、北野節がいよいよ冴え渡っている。そのごく一部を紹介したい。






■2.国家の「自立」はトータルで考える必要がある

 自眠党の矢部総理、眠主党の田野前総理、「一新の会」岩原、下橋代表をはじめ、多くの有力政治家が、壇上のプーチンの一言一句に意識を集中させた。

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  まず、日本はようやく「自立」という目標にむかって歩き始めた。これは、ほんとうにすばらしいことだ。

  2000年、私が大統領になった時、ロシアは欧米の属国状態だった。当然ながら、私は祖国の「自立」を強く願った。

  だから、戦後70年近くも「属国状態」に置かれているあなたたちの気持ちも実によくわかる。
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  ソ連の崩壊後、いかに欧米諸国がロシアを搾取し、属国扱いしたか、そして、プーチンがどのようにして、その状態から脱したかは、[c]で紹介した。

  プーチンは「国家の『自立』はトータルで考える必要がある」として、経済の自立、エネルギーの自立、食料の自立、軍事的自立、そして精神の自立が必要だと述べた。会場は「シ~ン」と静まり返っている。






■3.「自立」と「孤立」は違う

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  次ぎに大事なこと。それは、「自立」と「孤立」は違うことをはっきり知っておくことだ。

  日本はなぜ第二次大戦に負けたのか?
  私は、それは日本が世界のなかで「孤立」したからだと考えている。日本国民は、当時、「満洲はわが国の生命線」と信じていた。そして、あらゆる犠牲を払ってでも「満洲国」を守る決意を固めていた。

  結果、国際連盟ですべての国に反対され、国際社会からの退場を余儀なくされた。はっきりいえば、この時点で日本の負けは確定したのだ。ソ連、アメリカ、イギリス、中国を敵にまわして勝てるはずがない。そんなことができる国は、世界に一つもない。

  だから、「自立」を目指す過程で「孤立」しないよう、これからの日本は細心の注意を払って進まなければならない。
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  いわば、戦前の日本は「自立」のために満洲国を建設したのだが、その結果、「孤立」してしまったのだ。

  そして日支事変(日中戦争)が始まるが、それは孤立した日本と、米英ソから支援を受けた中国との戦いだった。戦闘では日本軍が圧倒していたが、米英ソの支援を受けた蒋介石政権は中国の奥地に引っ込んで、なかなか降伏しない。

  事変解決の展望が開けないまま、日本は米ルーズベルトの策略で対米英戦争に引きずり込まれ、最後には中立条約を結んでいたソ連にまで攻撃されて、降伏する。第2次大戦での日本の敗戦は、「孤立」が原因だとするのは、こういう事である。






■4.日本を孤立させようとする中国のたくらみ

 現代の国際社会でも、日本を孤立させようというたくらみがある、とプーチンは説く。

  2010(平成22)年は、尖閣諸島で中国漁船が保安庁の巡視船に体当たりして、日本国民を驚かせた年だが、その前後には次のような動きがあった。

  ・9月7日、尖閣諸島中国漁船衝突事件
  ・9月26~28日、ロシアのメドベージェフ大統領、中国訪問。「北方領土を訪問する」と宣言。
  ・11月、メドベージェフ大統領、北方領土訪問

  衝突事件で、日中対立が最悪の時期に、ロシア大統領が中国政府と会談し、突如、北方領土訪問を宣言し、その通りに実行している。中国がロシアを巻き込んで、同じ領土問題で連帯し、日本を孤立させようとしたのである。

  同様の動きは、2012(平成24)年にも起きている。

  ・4月16日、石原都知事、尖閣諸島買取を表明
  ・7月3日、メドベージェフ首相、北方領土訪問
  ・7月7日、野田首相、尖閣国有化を表明
  ・8月10日、韓国、李大統領が竹島を訪問
  ・9月、中国で大規模な反日デモ発生

  ロシアの動きは前回と同様だが、今度は韓国まで加わっている。

  実際に、ロシア、韓国を巻き込み、「反日統一戦線」を作ることを訴える意見が、中国から出されている。

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 「韓ロと共同で日本に対処を」=尖閣にらみ、領土問題で中国紙

 【北京時事】中国共産党機関誌・人民日報系の国際問題紙・環球時報は(2012年8月)11日、李明博韓国大統領の竹島訪問とメドベージェフ・ロシア首相の北方領土訪問をめぐり、
 「中国は領土問題でロシアと韓国の立場を支持し、共同で日本に対処すべきだ」
とする社説を掲載した。(時事通信2012年8月12日)[1,p55]
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  中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島、ロシアとは北方領土の係争を抱える日本に対し、中国は「反日統一戦線」を作ろうと呼びかけているのである。

  しかし、日本との領土問題と言っても、北方領土はロシアが、竹島は韓国がすでに実効支配しているので、両国が自分から動く必要性はない。中国だけが尖閣諸島を奪おうとしているので、一番危険な仮想敵国なのである。






■5.アメリカをも「反日統一戦線」に引き込もうとする中国

  中国はこの「反日統一戦線」にアメリカをも引き込もうとしている。中国外務省付属国際問題研究所の郭副所長は、モスクワで次のように提案している。

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  郭氏は、中国、ロシア、韓国による反日統一共同戦線の創設を提案している。
  日本に第2次世界大戦の結果を認めさせ、近隣諸国への領土要求を退ける必要性を認識させるために、この戦線には米国も引き入れねばならない。(The Voice of Russia, 2012年11月15日付){1,p98]
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  日本が「北方領土」「竹島」の返還を要求し、「尖閣」を支配し続けるのは、「日本が第2次大戦の『罪』を全然反省していないからだ」というプロパガンダである。中国は「領土問題」を「歴史問題」にすりかえることで、日本を孤立させようとしている。

 「歴史問題」を出されると、アメリカは、日本の味方につけない。日本を戦争に引きずり込み、原爆攻撃で一般市民の大虐殺をやった国であるから、「歴史問題」で日本の味方をしたら、「自国の正義」を否定することになってしまう。

  だから、日本が「歴史の見直し」を国際社会に訴えることは、中国の仕掛けた罠にみすみす、はまってしまうようなものだ。




■6.英霊の願いは「日本を守る」こと

 プーチンのこの指摘には、矢部首相は反論した。「いやあの、東京裁判は『勝者の断罪』ですから、世界がこれを見直すまで、日本の英霊は浮かばれないでしょう?」

  プーチンは声を荒げた。

 __________
  ばっかやろう!!!
  英霊が本当に望んでいるのは、彼らの子供や孫たち、ひ孫たちの幸せじゃねえのか? 70年前の話をむし返して、またアメリカとケンカすることか?

  そうじゃねえだろう。彼らは『日本を守るため』に死んでいったんじゃねえのか?

  彼らの願いは『日本を守ること』じゃねえのか? そう、日本を守ることだ!いいか、日本を「いま」守ることだ! いまの日本には、悠長に『歴史認識云々』いっている余裕なんてねえんだよ!

  中国は、『領海侵犯』『領空侵犯』を繰り返し、つまり『戦争準備はできている』ってことだろうが![1,p118]
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  中国の言い分に対しては、「中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは1970年代に入ってからのことで、第2次大戦とは全然関係ありません」と受け流すべきだ。

  そして、歴史問題で中韓のプロパガンダに対抗するには、民間NPOなどに、金を出して、運動を展開して貰うことだ。




■7.中国を大人しくさせるのに、日米同盟は役立っている

 幸い、アメリカは中国の仕掛けた歴史問題の罠に引っかからずにいる。

  中国漁船衝突事件の後も、中国はレアアースの輸出制限や、フジタ社員の拘束など強気の態度を崩さなかった。しかし、アメリカがはっきりと日本の味方についたことで、一気にトーンダウンした。

  スタインバーグ国務副長官、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官、マレン統合参謀本部議長、オバマ大統領が相次いで、日本支持の声明を出した。特にアメリカが「尖閣諸島は安保条約の適用対象」と宣言したことが大きかった。アメリカは中国の5倍の軍事費を使っている国である。当然、そんな国と、中国は戦いたくないので、大人しくなった。

  日米同盟に関して「アメリカは、日本と中国が戦争になったとき、本当に日本を守ってくれるのか?」という議論がある。これについては、誰も断言できない。

  ただ、アメリカが「尖閣諸島は安保条約の適用対象」と宣言しただけで、中国が大人しくなったのだから、現時点で日米同盟は役に立っている、と言える。

  日米同盟が強固に維持できていれば、中国も対米戦争までは恐れて手出しをしないから、逆に平和を保てるのである。




■8.孤立化路線か、日米同盟路線か

 こう見ると、日本は、中・韓・ロシア・アメリカ全部を敵に回した「孤立化路線」か、中・韓・ロシアに対抗する「日米同盟路線」しか、道はないということがあきらかになる。

  前者は、まさに第2次大戦の構図で、日本必敗である。戦いを避けて中国の属国となれば、チベットやウィグルの二の舞になる。それこそ先の大戦で、国のために命を捧げた英霊に申し訳ないことになろう。

  米国はまことに自己中心的な国で、自分勝手な要求を次々と押しつけてくるが、それを知った上で、なおアメリカと組む、というのが、日本のとるべき道だ。

  その上で、アメリカの衰退を補完する形で、じっくり時間をかけて、日本が軍備強化を図れば、孤立せずに軍事的自立も果たせる。

  ところで、戦前の日本はなぜ、必敗の孤立化路線を歩んでしまったのか。プーチンはその遠因が日英同盟の廃棄にあるとする。

  日英同盟のお陰で、日本は日露戦争を勝てたのに、第一次大戦では英国を助けるために、海軍こそ出したが、陸軍は出さなかった。英国に助けて貰ったのに、英国の必要な時に助けなかった、という武士道にあるまじき行動をとったのが、孤立化の遠因だった。

  今の日米同盟も、せめて集団的自衛権の解釈変更くらいはすぐにやって、たとえば日本海で米艦が危急の際には、すぐに自衛隊が助けに行くぐらいのことができないと、日米同盟も持たない。

  以上がプーチンの口を借りた北野氏の主張だが、こうして見ると、現在の国際情勢は戦前とよく似た構造をしている事が分かる。氏の従来からの国際情勢の簡潔・明瞭な分析に、歴史的なパースペクティブが加わって、その主張はぐっと奥行きが増してきた。

 

http://blog.jog-net.jp/201312/article_5.html



■リンク■

 a. JOG(565) ロシアから日本を見れば
 私達が抱いている自画像とは、まったく異なる国の姿が見えてくる。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h20/jog565.html

 b. JOG(515) 石油で読み解く覇権争い
 北野幸伯著『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日』を読む
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h19/jog515.html

 c. JOG(382) 覇権をめぐる列強の野望
  北野幸伯『ボロボロになった覇権国家(アメリカ)』を読む。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h17/jog382.html

 ■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
   →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 北野幸伯『日本自立のためのプーチン最強講義』★★★、集英社インターナショナル、H25
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4797672641/japanontheg01-22/

 





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